2024.3.15 天塩山地380峰 バックカントリー

 天塩山地380峰は、2月26日に430峰を訪れた途中の稜線です。この430峰に登る途中左方向に魅力的な斜面が見えていたことと、430峰を含め地表まで開いた多数のクラック(積雪グライド=底面滑り)が発生していました。その後、旭川では3月1~2日にかけまとまった降雪と3月11日ころより最高気温もプラスとなり各地山岳地帯では雪崩発生とのニュースもあることから、あのクラックが発生源となって雪崩が発生しているのではないかと思い向かってみました。

 右方向に見えた多数のクラックはさらに拡がったものはありましたが、見る限り雪崩の発生は確認できません。なぜ雪崩がおきていないか疑問に思い調べてみました。2月26日のブログにも記載しましたが研究者によれば雪崩地形や積雪グライドによる浸食地形(雪食地形)の発生する箇所は福島県只見川流域や秋田県森吉東麓と限られた地域とされています。福島県只見川流域では令和4年3月上旬に橋や道路が雪崩被害にあっているようです。気温や降雪を気象庁のデータから拾ってみました。秋田県森吉東麓についてはデータがありませんでしたので幌加内町と福島県只見川流域のデータを比べることにしました。

 幌加内周辺でグライドクラックが発生するのは経験的に2月になってからです。1月までの降雪量の累計は幌加内647cm、只見722cmとなっていて只見のほうが10%ほど降雪が多いようです。外気温に関係なく雪に埋もれた地表は0℃程度いわれていますから地表面は雪が解け出して大量の積雪による重みで底面滑り(積雪グライド)が発生するものと思います。幌加内と只見の平均・最高・最低気温を比べると幌加内より1カ月程度先の気温が只見のようです。このことが雪崩発生時期の違いが生まれているのではないかと思います。幌加内が只見のように3月に雪崩が発生していないのは大きく開いた開口部より時にはマイナス30程度の冷気が侵入し雪が解けだして底面滑りを起こしている地表や積雪底部を凍らすことにより3月15日時点では雪崩が発生していないものと推測しています。しかし、これからさらに気温が上昇すると只見のように雪崩が発生するのではないかと思っています。今回、たまたま通過した斜面には「うねうね」「しわしわ」の発生源と思われる点的グライドクラックが集中的に発生してる箇所がありましたので下記にその写真も掲載してみました。

 すっかり雪崩の話になりましたが、斜面は7~8cm程度のパウダーでその下は固めで滑りやすい雪でした。

    月平均気温 月最高気温 月最低気温 月降雪量 月降雪量累計
    幌加内 只見 幌加内 只見 幌加内 只見 幌加内 只見 幌加内 只見
2022年 11月 2.5 7.9 13.9 20.8 -6.5 -0.2 40 0 40 0
2022年 12月 -5.3 1.5 4.0 11.4 -23.7 -3.1 376 337 416 337
2023年 1月 -9.8 -1.2 5.0 9.0 -31.4 -10.1 231 385 647 722
2023年 2月 -8.8 -0.7 5.9 10.5 -31.4 -11.3 156 200 803 922
2023年 3月 0.4 3.3 12.2 18.7 -13.1 -5.8 42 35 845 957
2023年 4月 5.0 8.6 16.3 27.0 -8.6 -2.5 4 7 849 964

                       気象庁 過去の気象データより

途中からトレースは完全になくなりました。

林道を進みます。

途中からトレースは完全になくなりました。

苦労するほどのラッセルではありません。

登るに従い、良い斜面が現われてきました。

登るに従い、良い斜面が現われてきました。

稜線から積雪グライド(底面滑り)が発生しているようです。

進行方向右の斜面です。

稜線から積雪グライド(底面滑り)が発生しているようです。

デブリは確認できません。

ヤドリ木あちらこちらにあります。

ヤドリ木あちらこちらにあります。

もうすぐ稜線です。

もうすぐ稜線です。

目標としていたところですが、稜線上でピークではありませんので目立ったものはありません。

目標としていたところですが、稜線上でピークではありませんので目立ったものはありません。

正面方向から滑り降ります。

正面方向から滑り降ります。

いい斜面なのですがやや傾いているのが残念。

いい斜面なのですがやや傾いているのが残念。

雪も安定しクラックも見られないので沢方向へ滑り降りました。

雪も安定しクラックも見られないので沢方向へ滑り降りました。

点的に多数発生しているグライドクラックの巣に入っていました。点が面になっています。

沢に降りてから、斜面をトラバースしていると点的に多数発生しているグライドクラックの巣に入っていました。点が面になっています。これが「しわしわ」「うねうね」を創っているものと思います。

雪崩の可能性は低いと思いますがクラックに落ちると厄介なことになりますので慎重にルートを選択し上ったコースに戻りました。

下方にもあります。

下方にもあります。